近年、我が国では人手不足が深刻化しており、経済や社会基盤の持続可能性に影響を及ぼす懸念が高まっています。
このため、国内人材の確保や生産性向上の取組を講じてもなお、人材確保が困難な産業分野
において、一定の専門性・技能を有し、即戦力として就労可能な外国人材を受け入れる制度として |
①人手不足の解消 |
1.介護介護と介護に付随する業務が可能で、任せられる業務は入浴介助・食事介助などの身体介護などと、それに付随する支援業務となります。 職業としては、介護士、看護助手です。※訪問系サービスはできません。 ただし、訪問介護における人手不足が深刻であることから、今後、訪問系サービスでも就労可能になります。 【現状】 2024年6月末時点、特定技能「介護」で日本国内に在留している外国人は36,719名です。 特定技能「介護」の試験は非常に進んでおり、日本国内のほかフィリピンをはじめとした海外でも実施。合格者数は2024年6月末時点で87,371人となっています。日本国内も海外も積極的に試験が実施されており、海外は12か国、特に近年はインドネシア国籍の増加が顕著です。 介護は唯一、特定技能2号が存在しない分野です。 特定技能1号を修了後に引き続き介護分野で就労したい場合は、在留資格「介護」へステップアップするのが一般的です。この場合、特定技能1号の在留期間中に介護福祉士の資格を取得する必要があります。 2.ビルクリーニングビルクリーニングは、事務所や学校、興行場、店舗など、不特定多数の人が利用する建築物の内部を清掃します。場所、部位、建材、汚れ等の違いに応じた洗剤や用具の使い分けなどの専門知識を持っているとされます。特定技能「ビルクリーニング」分野では日常清掃、定期清掃などの清掃業務のほかに、付随的な業務として、一定の範囲であればホテルの客室ベッドメイク作業にも従事できます。そのため、ビル清掃だけでなくホテルでの雇用も可能です。 ※ただし、この付随的な業務に従事してもらうには、通常、日本人が従事している関連業務でなければなりません。 出典:ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針|出入国在留管理庁 3.工業製品製造業(2022年に3分野統合)いわゆる製造業分野です。もともと3つの分野に分かれていましたが、2023年統合し、2024年に分野の名称も変更となりました。(素形材区分) 金属、プラスチック、ファインセラミックス等の素材に、熱や圧力を加えて加工したものを「素形材」といいます。その素形材を部品・部材などに加工する業務に従事します。 2022年12月末現在、受け入れ人数は統合した総数で27,725人です。 (産業機械製造区分) 事務所や工場内で使用される産業用の機械全般(農業、工業、木工機械など)を製造。 2023年までの受け入れ見込み人数は5,250人、実際に受け入れられているのは2022年3月末時点で6,021人と見込みを超えました。そのため、2022年4月1日より、新たな在留資格認定証明書の発行を停止しています。 最も多くの外国人労働者を受け入れている国内産業は製造業であり、技能実習生が多く訪日していることから、特定技能への切り替えが活発になっていることも一因です。現在の特定技能人材は、この切り替え人材が殆どとなっています。 (電気・電子情報関連産区分) 電子機器の組み立てやめっき、機械加工など。 電気・電子情報関連産業では、2022年3月末時点で、3,258人が受け入れられています。 4.建設業【概要】建設分野は、建築大工の他、内装や左官などの仕事に従事できます。業務区分は、土木、建築、ライフライン・設備の3つに分かれています。区分ごとに従事できる業務が違い、試験内容も異なるのでよく確認する必要があります。 < 建設分野の業務区分変更 > 建設の業務区分は19区分(18試験区分)でしたが、これを技能実習対象職種を含め、建設業に係る全ての作業を3つの特定技能業務区分に再編しました。詳細は以下をご覧ください。 ▶ 業務区分の統合に係る関係資料【特定技能制度(建設分野)】|国土交通省 【現状】 建設分野で働く特定技能1号の外国人は、2024年6月末時点で31,853人(全体の12.7%)、12分野中4番目に多い分野となっています。 これは、技能実習から特定技能に在留資格移行(変更)した技能実習生が多くいたからです。 特定技能1号の試験合格者は2024年6月時点でわずか1,853人、在留者数の約5.8%です。つまり、現在建築分野で働く特定技能外国人は、ほとんどが在留資格「技能実習」から在留資格変更した人材ということがわかります。技能実習から在留資格変更する際は、移行対象分野であれば受験不要で在留資格変更できるからです。 在留者数を区分ごとに見てみると、土木が18,850人、建築が11,065人、ライフライン・設備が1,938人です。一般的に建設業は「建築」をイメージする人が多いかもしれませんが、実際に特定技能外国人が多く活躍しているのは「土木」の区分です。 5.造船・舶用工業【概要】造船・舶用工業分野では、船を製造するための様々な工程の業務を行うことができます。 区分は「造船」「舶用機械」「舶用電気電子機器」「溶接」「塗装」「鉄工」「仕上げ」「機械加工」「電気機器組立て」の9つです。 【現状】 この分野で働く特定技能1号外国人は2024年6月末で8,703人で、「溶接」が4,861人と過半数を占め、圧倒的に多いことが特徴です。 1号の評価試験は集合形式で行われます。海外でも実施されていますが、フィリピン1カ国のみです。 2号の試験は「溶接区分」のみ実施していて、2024年6月末85人の合格者がいます。要件として、造船・舶用工業において複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者としての実務経験2年以上が必要になります。 6.自動車整備【概要】特定技能「自動車整備」では、自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備などの業務に従事できます。 また、これらの業務に付随すると考えられる関連業務(例えば、「整備内容の説明及び関連部品の販売」「自動車板金塗装や下廻り塗装作業」「洗車作業」「車内清掃作業」など)も担当することができます。 【現状】 自動車整備分野における特定技能1号の外国人は、2024年6月末時点で2,858人が受け入れられています。他の分野と比較してそこまで多い数ではありません。 技能評価試験は国内外で実施されており、海外はフィリピン、ベトナムの2カ国にとどまっています。 特定技能1号の試験合格者は2024年6月末時点で3,365人です。 特定技能2号の試験はほぼ毎日実施されており、今後の在留者数の変化に注目です。 7.航空【概要】特定技能「航空」分野は、「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2区分があります。 空港グランドハンドリングは、航空機の誘導や移動、貨物の搭降載などの業務を、航空機整備では航空機のメンテナンス業務などを行います。 【現状】 2024年6月末時点で受け入れられている特定技能1号外国人はわずか959人で、内訳は「空港グランハンドリング」が953人、「航空機整備」がわずか6人となっています。ほとんどが「空港グランハンドリング」です。 1号の特定技能評価試験は、他の分野と比較すると実施回数は多くありません。2024年6月末の試験合格者数は3,066名です。海外ではフィリピン、インドネシア、ネパール、モンゴル、スリランカの5カ国でも試験が実施されています。 対象者がいないことから、2号の試験は未実施です。 8.宿泊【概要】特定技能「宿泊」の外国人は、ホテルや旅館において、フロント、企画・広報、接客やレストランサービスと幅広い業務に従事することができます。 ただし、簡易宿所や下宿、風俗営業法に規定されている施設では、特定技能外国人を受け入れることができないため注意してください。また、風俗営業法に規定されている「接待」業務にも従事することもできません。 注意点は、宿泊分野はベッドメイキングをメインの業務にすることはできないということです。 「その業務に従事する日本人が通常従事する業務については可能」とされており、あくまで付随業務となります。ベッドメイキングの業務を中心に働いて欲しい場合は、特定技能「ビルクリーニング」の外国人を雇用しましょう。またホテル併設のレストランで受入れたいのであれば、特定技能「外食業」の外国人も選択肢になります。 ホテルで雇用される多くの外国人は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格ですが、業務の幅は特定技能外国人ほど広くありません。例えばフロント業務をしながら料理の配膳を行うことはできません。さまざまな業務に従事して欲しい場合は、特定技能の外国人雇用が適切です。 9.農業【概要】農業の業務内容は「耕種農業」と「畜産農業」の2区分があります。耕種は「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」の栽培、畜産は「養豚」、「養鶏」、「酪農」が該当します。また、関連業務として、農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業などが付随的に従事可能です。 「耕種農業」と「畜産農業」はそれぞれ別の試験が設けられており、合格した区分のみ就労可能です。どちらも就労したい場合は2つの試験に合格する必要があります。 雇用形態に派遣も認められている点が特徴です。 10.漁業【概要】漁業は、「漁業」と「養殖業」の2種類に区分され、それぞれ別の試験が用意されています。合格した区分でしか就労はできず、両方の業務に従事したい場合は2つの区分の試験に合格する必要があります。繁忙期や閑散期が対象とする海産物によって異なることから、派遣雇用が認められています。 【現状】 漁業分野の特定技能外国人は2024年6月末時点で3,035名と比較的少ない在留者数です。内訳は「漁業」が1,988名、「養殖業」が1,047名と「漁業」が多めです。 特定技能1号の試験の合格者数は、2024年6月末時点で1,403名です。 特定技能2号の申請要件として、日本語能力試験N3合格以上が求められるため、日本語のスキルが求められる分野となっています。 11.飲食料品製造業【概要】酒類を除く、飲食料品の製造、加工、安全衛生まで、飲食料品製造全般に従事できます。在留者数が多く、求職者からの人気が高い分野であることがうかがえます。 対象となるのは、以下の7業態です。 (食料品製造業) ①清涼飲料製造業 ②茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く) ③製氷業 ④総合スーパーマーケット(ただし食品製造を行うものに限る) ⑤食料品スーパーマーケット(ただし食品製造を行うものに限る) ⑥菓子小売業(製造小売) ⑦パン小売業(製造小売) ⑧豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(ただし豆腐・かまぼこ等加工食品の製造を行うものに限る) 参考:農林水産省|飲食料品製造業分野特定技能1号技能測定試験について:PDF 以前はスーパーマーケットでの就業はできませんでしたが、2024年3月の閣議決定により上乗せ基準告示の改正が決まり、総合スーパーマーケットや食料品スーパーマーケットがバックヤードで食料品製造を行う場合に限り、対象となりました。 12.外食業【概要】外食業分野では飲食物調理、店舗管理から接客まで、幅広い業務ができます。飲食店のフロアーはもちろん、ホテル併設のレストランで配膳業務などを依頼したい場合も、この在留資格で可能です。 これまで外国人が一般的な飲食店で幅広く働くことが認められた「就労ビザ」はなかったため、待望の在留資格といえます。 13.自動車運送業【概要】バス・タクシー・トラックを運転し、旅客や貨物などを運送する分野です。2024年に新たに対象となった分野です。 在留資格申請にはバス・タクシーは第二種運転免許、トラックは第一種運転免許必要となります。 また、タクシー、バスドライバーは日本語能力においてJLPTのN3が求められます。 【現状】 2024年にあらたに対象となり、試験も出張試験が開始したばかりです。CTB試験については準備が進められています。 5年間の受入れ見込数は24,500人です。 14.鉄道【概要】軌道整備・電気設備整備・車両整備・車両製造・運輸係員の業務に従事することが可能な分野です。2024年に新たに対象となりました。 運輸係員の業務については日本語能力が重要となることから、日本語能力試験(JLPT)のN3以上の要件が設定されています。 【現状】 2024年にあらたに対象となり、試験については車両整備の区分が、2025年3月実施で準備を進めているようです。 2024年から5年間で3,800人の受け入れ見込みとしています。 15.林業【概要】育林、素材生産、林業用種苗の育成(育苗)、原木生産を含む製炭作業とその関連業務に従事可能です。2024年に新たに対象となりました。 【現状】 2024年にあらたに対象となり、試験は2025年3月開始で準備が進められています。それまでは技能実習からの移行による在留資格取得のようです。 5年間の受入れ見込数 1,000人に設定されています。 16.木材産業【概要】製材業、合板製造業等に係る木材の加工等と、その関連業務に従事可能です。2024年に新たに対象となりました。 【現状】 2024年にあらたに対象となり、試験は2024年12月から実施されていますが1年にどの程度実施されるかは不明です。受験者数20人全員が合格。 国外試験についてはインドネシアでの実施が準備されています。 5年間の受入れ見込数 1,000人です。 |